フランス人漆芸家、重慶で漆を通じて東西の文化をつなぐ

ソース:新華社作者: 2023-11-13 15:45

重慶市城口県北屏郷松柏村の山奥にある漆の木に、漆液採取用の傷を付けるカズヌーブさん。(9月15日撮影、重慶=新華社記者/儲加音)

 中国の秦嶺山脈と大巴山脈から成る秦巴地域は、漆の産地として知られる。大巴山の奥深くに位置する重慶市城口県は、強い付着力と高い光沢度などの特徴を持つ「大木漆」を産出することから、多くの人を引き付けてきた。フランス人漆芸家のバンサン・カズヌーブ(Vincent Cazeneuve)さんも「大木漆」の魅力に引き付けられ、やって来た一人だ。

 カズヌーブさんは、アンティーク家具を修復する仕事を通じて漆工芸に出会った。中国を旅行した際、奥深い漆文化を知り、漆工芸を極めようと15年前にフランスから中国へ赴き、最終的に城口県北屏郷松柏村に移住した。以来、漆の森のすぐそばで暮らし、自身で採取、加工した漆を使って創作を続けている。

 漆かきの作業は、収穫量が少なかったり、山奥にある漆の木にたどり着くまでに危険な道を歩かなくてはならなかったりと、数々の不確実な要素と隣り合わせにある。漆の精製工程も奥が深く、一朝一夕で身に付くものではない。しかし、カズヌーブさんは決して間に合わせの仕事はしない。毎回異なる漆の状態を正確に把握することが、高品質な「大木漆」を使った作品を加工、制作する鍵となる。カズヌーブさんは村に来てから相次いで弟子を受け入れ、教えを請いに来る村の人たちにも、惜しみなく自分の経験を共有している。良質な「大木漆」はより良い作品表現を可能にし、城口県の漆はカズヌーブさんの作品に新たな命を吹き込んでいる。漆を媒体として、東洋文化と西洋文化の間により多くの交流が生まれた。

 カズヌーブさんは城口県で作品を制作するほか、中国の漆工芸文化をより多くの人に理解してもらうため、「大木漆」で創作したアート作品を各地で展示している。カズヌーブさんは伝統工芸について、非常に貴重であり保護、継承していく必要があると指摘。漆工芸の普及と継承に力を尽くし、制作を通じて中国の漆工芸文化を世界にもっと発信していきたいと考えている。

編集:董丽娜

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